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かつて私はフリーランスとして、制作会社の下請けで企画・撮影・編集を行っていました。その中で、新製品のカメラを世に広めるため、大企業の社員の方々をインタビューする機会がありました。

ある日、良いインタビューを行うために準備をしていると、制作会社の担当者から「これはCMではないし、予算もない。ただの誰でもできるインタビュー撮影だから」と言われました。求められていたのは、関係者の労力を最小限に抑えながら、大量の動画を効率的に生み出すワークフローでした。

撮影当日、カタログやパンフレットの内容をそのまま話してもらい、順調に撮影は進みました。
しかし、撮影の合間に開発者の方々と昼食を共にした際、彼らがカメラを開発した本当の理由を聞くことができました。

ある開発者の方は、自然が大好きで、スリランカにスキューバダイビングに行った際の体験を話してくれました。自社のカメラで美しい自然を撮影したものの、小舟から漏れたオイルや踏み倒された草を写真に収めた時、そのカメラが幸せな感情を表現する色しか持っていないことに気づいたそうです。
この経験から、幸せな思い出だけでなく、複雑な感情も表現できるカメラを設計したいと考えたとのことでした。

また、別の開発者の方は、母親が重い病気で入院した際の経験を共有してくれました。写真が好きだった母親に自社のカメラをプレゼントしましたが、撮影された写真は手ブレで何が写っているのかわからないものでした。
この経験から、力のない人でも手ブレしないカメラを開発したいと考えました。

これらの話を聞いたとき、私はカタログの内容を動画にするだけの仕事に違和感を覚えました。新製品を広め、多くの人に体感してもらうためには、開発者の情熱や思いを伝えることが重要だと感じたのです。

労力や予算をかけずに制作することも大切ですが、人の心を少しでも多く考えたい。ある製品やサービスがなぜこの社会に存在するのかを伝え、人と人との共感的なつながりを作り出す映像を提供したい。
このような思いで、Gurus Film Productionを設立しました。